私のアリスソフト史１３(2002-2003)

 

ブランド戦略　エロゲーの価格

２００２年

エロゲー業界は、葉鍵（Ｌｅａｆ，Ｋｅｙ）など

ほぼ一本道の物語を見せるタイプが大人気になっていた

萌えとか、メイド喫茶とか・・そんな文化の時代

１９９０年代は、自分の好み＝ユーザーも好きに違いない

という気持ちで突っ走ってこれたが・・

２０００年になってからは、主流から外れてしまった感が・・

萌え？　うん、わかんない・・　付いていけない

まぁ、正直、焦る気持ちもあったけど

かといって、そういう物が作れる訳もなく（特に私

割り切って、自分達の道を進むしか無いのだ

└|∵|┐　┌|∵|┘　└|∵|┐

この年、新しいプロジェクトを実施した

エロゲーは、１本作るのにも時間がかかるし

さらに当たり外れも大きい

ギャンブルみたいな商売

これでは、会社として安定しない

安定の為に複数の柱が欲しいのだ

アリスソフト本体

アリスブルー　（女性向けブランド）

そして、外部ブランドとなる

アリスノワール

アリスクリムゾン

複数ブランド化戦略を始めた

たくさんゲームを出したら、どれかヒットするさ

どこかのブランドが大成功するさ

さらに私は考えた

業績を安定させる為には定番が必要だ。

ポッキーやカップヌードルのような定番商品だ

常にショップの棚に並んでいる定番だ

そう、その頃、ゲーム機では、そういう戦略で動いているメーカーがあった。

プレイスーション、シンプルシリーズ

定番のゲームを低価格でというアレ

よし、エロゲーのシンプルシリーズ相当を俺達がやって

定番棚を占拠しよう。

　ザ・女子高生

　ザ・中学生

　ザ・レイプ

　ザ・脱ぎ麻雀

　ザ・恋愛ゲーム

　ザ・眼鏡・・触手・・痴漢・・女教師・・妹・・巨乳・・ふたなり

こういう奴だ、エロマンガの定番シチュエーションみたいな感じでもいいかもしれない

同じ内容でも定期的に絵柄を変える事で継続定番商品に出来るかもしれない

と言う訳で、スタッフに説明してプロジェクト開始

　└|∵|┐　「みんな、定番な、定番になるエロゲーを作るぞ」

社内で複数の企画がスタートした

第１弾．妻みぐい

ちょっと濃くないか、まぁ、人妻というのもジャンルかな

うん、まず1本目としてＯＫ

その後、

ＤＡＬＫ外伝

ランス５Ｄ

ままにょにょ

あれ、ちょっとマニアックすぎじゃないかな、

もっと一般の、初心者のエロゲーユーザーがまず最初に買うようなシンプルな物をだな・・・

　ザ・レイプとか、ザ・お姉さんとか、ザ・ロリとか・・・

「ＴＡＤＡさんも、ランス５Ｄというキワモノじゃないですか」

「・・・・・」

まぁ、そりゃ、せっかく作るんだから、ありがちなの作りたくないもんね

金儲けに徹するなら出来るかもしれないが

クリエイターを自負する者には無理な話であった

てな感じで当初のコンセプト（エロゲー定番シリーズ）は破綻した

３月、妻みぐい

価格．２８００円

企画シナリオ．風麟

原画．ちょも山

初の２８００円シリーズ、値段のインパクトもあったのかむっちゃ売れた

若干ロリ気味の私には・・

妻かーーうーん　おばさん？（失礼）

この企画担当は、風麟という男

以前はコンシュマーゲーム会社に勤めていたが

エロゲーが作りたいと当社に来た芯の通った奴

大抵、最初の開発はなんだかんだいって

私やベテランスタッフがけっこう手助けする事があるんだけど

彼は、なんの手助けも無く1人でどんどん作ってくれた

いやぁ、助かる

頼もしい

・・・俺と性癖は違うけど

８月、エスカレイヤー

価格．８５００円

企画シナリオ．ＨＩＲＯ

原画．おにぎりくん

変身ヒーロー物です

このジャンルの先駆けになったんじゃないかな

ＨＩＲＯは、ほんといろいろな引き出しを持っている

私は、ゲーム部分をいくつか手伝った

サイコロとか・・

・・これが20年後の今（２０２２）、ソシャゲーになってアリスソフトの看板商品になっているんだよね、感慨深いね

９月、ＤＡＬＫ外伝

価格．２８００円

企画ゲームデザイン、ぷりん

原画．むつみまさと

ヘックス画面でプレイするゲーム

やっぱヘックスだよね

１０月、ランス５Ｄ

価格、２８００円

企画、ＴＡＤＡ

原画、織音

作りたいゲームを作った

やりたいゲームを作った

それがコレ

ゲームデザイン、俺

シナリオ、俺

プログラム、俺

ゲームが大規模かしてきたので

自分は指定や発注するだけとなって来ていたけど

やっぱ、自分で出来るだけ作りたいのだ

この２８００円シリーズというチャンスなので

好き放題やったぜー、満足

　　定番シリーズの構想は、どこへ消えた・・・

https://www.youtube.com/watch?v=RHihvtaFEHg

ランス５Ｄのオープニングムービーは、超お気に入りだ

見てくれ、見てくれ

ランス６の開発スタート

大悪司、ランス５Ｄと織音と組んで調子よく作れた

この勢いでゴーという事で

大風呂敷を広げたランス６の開発が始まったのだー

２００３年

２月、ままにょにょ

価格．２８００円

企画ゲームデザイン、ぷりん

にょシリーズ第３弾、どんどん洗練されていく

かえるにょぱにょん(1997)

かえるにょ国のアリス(2000)

このシリーズは、ユニットの使いまわしが出来ているのがいいね

良い素材を作れば、長く使えるというのはほんと良い

３月、妻みぐい２

価格．２８００円

企画ゲームデザイン．風麟

風麟、君は妻物しかつくれんのかー

俺達はアリスソフトというブランドだぞ

分かっている、アリスだ、アリス　　そう　ロリコンだ

君も少しはそれに合わせてだなぁ

聞く耳を持ってくれません

彼は芯が通った男です

ハニービルの改造

この頃、築１０年近くたっていたのでいろいろ改装があったよ

サーバールーム

ネットワークサーバーを置いた、クーラーでキンキンに冷やした冷蔵庫みたいな部屋

サーバーがダウンしたらプログラマーが「寒い寒い」と言いながら中で作業していたなぁ

音響ルーム

Ｓｈａｄｅがガンガン音を出す為に欲しいという事で完全防音室を作った

が、実際に使い出すと・・なんかアレルギーを感じる（壁材？）とかであまり使われる事は無かった

高いお金かかったんだけど、しかたないね。

シャワー室

残業しても泊まり込んでもオーケ、廃人のように働けーという事で設置していたのだが

当社もホワイトな会社になってきたのであまり使われないようになり撤去しました

喫煙室

タバコ吸いの人達を隔離する為に作った

私はタバコの匂いが嫌いなんだ、そこで閉じ籠もっていろと

・・・

が、織音とかヨイドレとかもタバコ吸いで、そこでゲームやランスの話を楽しそうにしているのだ

あああ・・・俺も仲間に入れてー、その雑談に参加したい

がっ・・駄目だ、あの中には入れない、毒だ、毒の部屋だ・・

そんな俺にとっても困った部屋

自社ビルは、自由に改造出来るのが良いよね。

　　私としては、いざという時の為に屋上に対空砲を備えたかったんだけど・・

６月、シェルクレイル

企画シナリオ．上田庄吾

原画．Ｍｉｎ－Ｎａｒａｋｅｎ

期待のライター、上田庄吾

大悪司の那古教で大活躍（ちんこ）、ミニゲームやシナリオの一部を担当を歴て

満を期して企画メインライターとして挑んだのだが・・

やる気が空回りしたのか、開発も予定より遅れに遅れ・・

エロゲーというより文学？

なんか重いというか、しんどいゲームになった

そして、評判もあまりよくなかった

結局、彼は会社を辞めていった

自分の作りたい、見せたい表現、いくらそれを強く思っていても

多くのユーザーに伝わらないと仕事として続けられない

上記の風麟は、それがうまかったな（自分の好きで勝負出来る市場を掴む）

その後、他の会社のライターしたり、小説書いたりしていたけど

今はどうしているんだろうな

どこかで活躍出来ていたらいいのだけど

・・・彼、ほんといい青年だった、アリスソフトで成功させてあげる事が出来なかった事が残念です

８月、ナイトデーモン

企画シナリオ．とり

原画．カーネリアン（外注）

これも遅れた・・

いろいろあって遅れた

前にも書いたが、

何がズレて遅れるた開発はうまくいかない

泥沼を掻き分けて作り上げても結局はあまり良い結果にはならないのだ

これもあまり売れなかった

当時、アリスソフトの主力ゲームは８５００円で販売していたが

このシェルクレイル、ナイトデーモンの２本は

７５００円にした、うん、察してくれ

１２月、大番長

企画シナリオ．イマーム　＆　ＨＩＲＯ

原画．むつみまさと　＆　おにぎりくん

　

大悪司が発売されてしばらくして・・

イマームとＨＩＲＯが同タイプを自分達にやらせて欲しいと言ってきた

番長物、日本全土、ふむふむ

イマームとＨＩＲＯそれぞれのセンスが生きそうな舞台だよね

ゲーム部分は栗林が担当なのね、がんばってー

私は基本ノータッチで任せていたんだけど

この時期は、ランス５Ｄ、ランス６と作っていたしね

途中で「わかんない、助けてー」と言われた

特にゲーム部分、構成が煮詰まっていたようで手助けに入りました。

いや、これは、偉そうに自慢的な意味で書いているのでなく

「頼りにされる」ってうれしいんだよ

まったく、しかたないなぁと言いながら、ニコニコ作業をしたのであった

・・・逆に寂しいのは、そういう相談もされない事なんだよね

・・・うわっ、そんな事になる前になんで言ってくれないとか

最後は、スタッフ総動員で作ったかな

この子、好きー

グリモア？だっけ、この悪魔人形、ぬいぐるがグッズで作られたので持ってたよ

・・・羽の部分が劣化して駄目になったので捨てたけど

無事に完成し、これも大ヒットした

よかった

さて、ランス６の開発に戻るのだ

次は、２００４年だー

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コラム．エロゲーの価格

自分自身がエロゲーユーザーだったので、

作る際も売る際もユーザー視点です

自分だったら買うか？　欲しいか？

これが基準です

￥６８００円

アリスソフトを始めた頃、業界標準価格が￥６８００円

当社もそれに合わせた価格にした

ランス３、闘神都市２　あたりまでは、この値段かな

値引率もけっこうあったし、消費税も３％だったので

５０００円ぐらいで買えたかなぁ

そのくらいだったらね、と思える値段でした。

ある時期から、多くのメーカーのエロゲーの価格が上がってきた

　７８００円

　８８００円

と・・・

ちょっとずつ同業社も合わせていく事になるので

エロゲーの平均価格は、確実に上がっていった

・・・うーん、高い

でも、開発費も増えているし

もっと利益欲しいのは事実だが・・ももももも

だが、それでも他社より１周り安くする事を心がけた

少しでも安くだ

だって、俺、そんな高いの買いたくないもん

　ポイント．自分が買う気にならない値段で売ってはいけない

￥７５００円

業界的に８８００円のゲームが増えてきた頃だ

この値段にした

７８００円でなく、７５００円なのは小さな意地だ。

￥８５００円

業界的には９８００円の物も出てきた

が・・意地で８５００円にした

　ここでも８８００円で無いのは小さな意地

この300円の差は、俺達の意地なんだ

流通、ショップ、あらゆる所から文句は言われた

「アリスソフトさんは、大手なんだから高くしましょうよ、十分売れますよ」

一つ思っていた事があった

沢山売れる人気商品が高いのはなんでなんだ？

沢山売れるんだから利益も出てるし、もっと安く出来るはずじゃない？

　

採算分岐点を越えて売れたら、後は利益だけなんだから

もっと安く売っても良いだろうにと

※　この考えは、これはこれで問題がある事は理解しています、はい

￥２８００円

発売からある程度経ったゲームは、廉価版として安くした

また、最初から￥２８００円で販売するゲームも出した

もっと安くしたい、安く売りたい・・

エロゲーの適正価格は、￥４８００ぐらいがいいよね

気楽に変える値段は、そのくらいだ

あまりにも高いから、違法コピーとかの手段を取る人が出てくるのだ

税込み１万円以上とか異常としか言いようがない

常に安く売れないかなぁとか考えていた

ただ、ある時期までは自分の考え（自己満足）で価格戦略を推せたけど

社員も増え、考え方が違う人も増え、みんなの生活もかかってくると

あまりそれも押せなくなってきた

２０１３年のぱすちゃ３あたりから、８８００円に定価を変えた

３００円の意地は捨てた

ランス１０は、ついに９８００円にした

意地で９５００円にしようかと思ったが・・

まぁ、最後だしね

それに・・

￥９５００でも、￥９８００でも、当時の消費税８％を入れると

１万円超えるから無駄な努力だなぁと・・

　

もし、消費税５％だったら・・￥９５００にしたかもしれない

　（これだと１万円以下になるので）

会社経営をやってきたので、夢物語は語れない事は分かっているが

分かっているけど・・・　￥８８００円という値段は高いよ

ほんと

ねっ

私達が作った一番高い商品

１億円

当時、ユーザークラブの会員全員に無料でプレゼントした音楽ＣＤ

お金は取らないので、ネタとして定価１億円と書いた

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パッケージ商品全体に関する事

￥８５００円とか、すごい価格な物を買ってもらう以上

出来るだけのサービスをする

少しでも楽しんでもらえる物にする

そんな気持ちでマニュアルや、おまけＣＤとかいろいろ力を入れた

値段を下げるのが難しいのなら、せめて付加価値をと

後、プロテクトもかける気は、毛頭なかった

プロテクトがかかっていると正規で買ったユーザーさんが不利益をこうむるんだよね

そんなの最低だよ、やるべきでは無い

それに違法コピーする人は、無料だからするのであって

プロテクトをかけても売れる数は増えたりしないよと

ただ、一時期、悩みに悩んだ上で当社の商品にもプロテクトをかけた

理由は、ユーザーに言われたから

　「自分達は正規でお金を出して遊んでいるのに、無料で遊んでいる人がいるのが不愉快」

まぁ、そらそうだ

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配布フリー

この年、いくつかの古いゲームを配布フリーにしました。

販売終了しているし、最近の環境での動作保証も出来ないし

商品としての寿命はとっくに切れている

ただ、そのまま　埋もれて消えてしまう　のは制作者として悲しい

それなら、放流したいと・・

メリットもいっぱいあるしね

　アリスソフトの宣伝になる、新作を買ってくれるかもしれない

　アリスソフトに良い印象を持ってもらえる

これは、やってよかったと思う

私もこの「私のアリスソフト史」を作る際、配布フリーにしていたおかげでプレイ出来た物もあるしね

実は、こんな事も考えていた

いつの日か・・もしアリスソフトが解散（倒産）になる時

それまで作った全ソフトを配布フリーにしたいなぁと・・・

　ま、これは、会社辞めたので私にはもう出来ないけど、いつの日か、その時のリーダーが行って欲しいなぁ

これは、アリスソフトに限らず

全てのメーカーがそうであって欲しい

会社解散の際は、ゲームや印刷物やいろいろな物をフリーにしたらいいじゃないかと

・・・ま、権利を別の会社に売る場合もあるだろうけど

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コラム．分家戦略

会社を維持するにはコストがかかる

エロゲー会社も同じである

アリスソフトの場合は、こんな費用がかかる

Ａ．ゲームを作るのにかかるコスト

開発スタッフの人件費

外注費

Ｂ．会社全体にかかるコスト

管理部門、事務経理

販売、製造、通販、宣伝、部門

開発システム、高度なプログラムを作る部門

先行投資、新人の育成費など

Ａに関しては、開発本数が増えれば増えるほど大きくなる

しかし、Ｂの基本コストは

エロゲーを１本作ろうと、２本作ろうと、１０本作ろうと

基本的に同じなのである（若干かわるけど

という事なので、

毎年１本し開発しない会社は・・

Ｂにかかるコストを１本の開発で引き受け無いといけないが

毎年１０本とか開発すると、その分担比率は下がり

Ｂにかかるコストを１／１０に出来たりするんだよ

会社を安定させる為は、複数の開発ラインを持つ事は必須なのだ

さらに効率良い方法としては・・・

開発部門だけの集団／会社と提携して

当社のＢの能力（販売管理、ブランド提供、開発システム）を提供する事で

いくらかのロイヤリティみたいな物を頂く

実際、当時、ビジュアルアーツなどは

グループ化して複数のブランドを傘下に持っていた

すごくうまくいっているように見えた、うらやましい

まぁ、マネしたかった訳だ

自社の開発システム（ＳＹＳＴＥＭ４）にも自信があったし、

アリスソフトのブランド力もあるし

いけるはずと思っていた

が・・結果、うまくいかなかった

アリスブルー

数年がんばったが、フェードアウト

アリスノワール

２本はなんとか出せたが、あまり売れずに・・フェードアウト

１作目　タイピング

２作目　麻雀ぽい、呪符バトルゲーム

３作目　双六型ボードゲーム

と毎回がんばってゲームを作っていたんだけど

アリスクリムゾン

一本も完成出来ずにフェードアウト

理想が高くなりすぎたかな完成しなかった

エロゲー業界のパブリッシャー？？

まぁ、分不相応だったよ

自分達はゲーム作りしか能のないクリエイター集団なんだから

そういうビジネス的な管理能力なんて無いのだから・・

いろいろな人に、夢と迷惑を与えてしまった

失敗した、駄目だった事もある

後から見ると恥ずかしい事もあった

だが、それでも

いろいろと考えていたんだ

足掻いていたんだ

立ち止まる事なく、次の一歩を

アリスソフトをもっと良い会社にしようと

そんな2000年代前半でした