私のアリスソフト史３(1989)

 

アリスソフト誕生

前回までのあらすじ

エロゲーを作りたかった私は

弱小エロゲーメーカー、チャンピオンソフトに入った

しかし、社長はエロゲー路線を止めて普通のソフトハウスを目指した

結果、業績は悪化・・会社はヤバい状態になってきた

└|∵|┐♪　はにほー

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１９８９年、平成元年

そういや、この時期の新卒生はバブル世代と言われるんだよね

内定は優遇され、金もウハウハ貰えてとか・・

しかし、我々は、そんな恩恵をまったく受けない場所に居た

チャンピオンソフトは、やばい状態になっていた

真っ当なメーカーになる為に、もうエロは作らないという社長の宣言

しかし、それで勝負出来るような技術力も無いので・・・

1. 売れない
2. あわてて作る、バグが出る
3. さらに売れない
4. 悪い印象が尽きまくる＝クソゲーメーカー
5. そしてお店も置いてくれなくなる
6. どんどん売れない

そして２転３点する開発方針

社長「このままでは駄目だ、急げばまわれだ

　　　少し時間をかけてでも技術力を高め良い物を作ろう」

技術力が無くＢＡＳＩＣしか分からない私に・・

ＤＯＳ、Ｃ言語を勉強して、ＲＰＧ、シミュレーションなど作れとか・・

・・・

鳴り響く借金取りからの電話

ふといなくなる社長

暗い顔をして現れる取引業者

一桁本数しか書かれていない注文ファックス

・・

さすがに、脳天気な俺達もやばいかなぁと感じ始めていた

後で聞いた話

　　この時点で累積赤字が１億を超え

　　通常の銀行から融資がもらえず

　　サラ金的な所からも借りている状態

　　取引先への支払手形は何度かジャンプしてもらっているとか

　　家賃は数ヶ月滞納

　　社長の自宅も担保に取られている

　　

　　周囲からは倒産すべきと助言されるが・・

　　倒産するにもお金がかかる、そのお金すら無い状態・・

　　進むも地獄、下がるも地獄

　　こんな状況だったそうだ

それでも社長は家族の生活費を削り、あちらこちらに頭を下げて金を借りて

私達社員への給与だけは出してくれていた

ほんと社長のメンタル凄いわ

創業する人ってやっぱ違うなぁ・・

・・・俺だったら、とっくに心折れて会社畳んでいるよ

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社長の決断

１９８９年、２月・・ついに限界が来た

社長は、我々社員スタッフを集めてこう言った

　今月の給与は払えない

　必ず遅れてでも出すが、いつ払えるか確約する事も出来ない

　だが、君達を解雇する気はない

　これからどうしたらいいか、何か意見があれば聞かせて欲しい

　仕事上の事、生活の事、なんでもいいから

　夕方までには戻ってくるから

と、言うと社長は出ていった

当時いた社員は８名ほどだったかな

みんな同年代の若者

私、Ｙｕｋｉｍｉ、とり、ＷＡＯ、ヨシタカ、他・・

この時の気持ちとかあまり覚えてないのだが

そんなに悲壮感は無く

けっこう前向きに考えていたと思う

歳の差もあり社長の指示は絶対だったので

不満に思っていても言えない事は沢山あった

これは、自分達の意見を言うチャンスじゃないとか

あと、社長の事をけっこう心配した

まさか、このまま帰ってこずに自殺するとか・・

まさかね・・

いやいや

・・・・・

・・・

・・

夕方、社長が戻ってきた

ほっとしたよ

で、私達は、こんな内容のレポートを社長に提出した

• 占いや競馬とか、ゲームじゃないソフトは売れてないので開発を止めるべき
• 体面など気にせずエロゲーを作りましょう、エロだとまだ売れる可能性があります
• ＤＯＳ、Ｃとか難しい開発研究とかやめて、出来る事をやりましょう
• 
  
• 広告はもったいないからやめましょう
• 残業代は無しにしましょう、無くても６時以降もやります
• 夕食は自費でいいです、冷蔵庫のジュースとかも全部自費でいいです
• 節約出来る所は節約しましょう

社長としては、集団退職とかも覚悟していたのかもしれないけど

当時の私達は若かった

みんな親元から通っていたし、ちょっと前まで学生だったので

生活の為に仕事をして稼がねばいけないという感覚とか弱かったのかも

それより、この職場、このみんなが集まる場所を失うのが嫌だった

みたいに当時は思っていたんじゃないかな

翌日・・・

社長は、私達の提案の多くを聞き入れてくれ

エロゲーを作る事を許諾してくれた

それどころか、チャンピオンソフトの名を捨てて

新しいブランドを作るとまで言ってくれた

そして多くの決定権限を与えて貰った

そう、任せてもらえたのだ

実際、社会に出ている者なら分かると思うが

企業というのは、若者にとってままならない場所である

やりたい事は出来ない、上からの指示でしか動けない

俺だったらこうするのにと思っても、何も決めれない

もちろん、理想だけで現実が分かっていない若者が自由にやれば失敗する可能性が高いから

上司や社長が若者に権限をすぐに与えないのは当然なのだが

この時、社長(一流大学出のエリート)は、私達(専門学校出のバカ若造)の

情熱とやる気に賭けてくれたのだ

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アリスソフト誕生

そんなこんなで、新しいブランドを私達は１から作ったのだ

あれこれ手探りで分からない事だらけだったけど楽しかったよ

いろいろな事を自分達で決める事が出来た

そして、念願のエロゲーが作れる

ブランド名やロゴを決めた

アリスソフト

みんなで案を出し合って決めたな、私は・・もっとヘンテコな名前を提案したが（採用にならずによかった）

マスコットキャラを作った

アリスと諭吉

当時は、まだブランドにマスコットキャラが付いているとか新しかったと思うよ

商品開発計画、価格や販売時期も考えた

ブランド方針や開発体制など組み立てた

エロゲーを作る、ユーザーフレンドリィでいこーとか

宣伝方法や、パッケージのデザイン、マニュアルの作り方・・

こんなアンケート葉書を入れようとか・・

パッケージには、堂々とスタッフの名前を入れようとか

いろいろな事を決めた

そういや、その頃から自然に私がリーダー的な立場になっていたな

最初の開発計画は3本同時

開発スタッフは８名ほどだが、３本同時に始めた

ランス

イントリューダー

クレセントムーンがぁる

音楽は各６曲まで発注ね、当然足りないだろうが

足りない分は他のゲーム用に作られた曲をうまく使い回せ

てな方針で作っていたなぁ

Ｒａｎｃｅ－光りを求めて－

ランスの事は、こっちのブログに細かく書いてあるので・・

イントリューダー　－桜屋敷の探索

清楚な美しいお嬢さんを見かけた主人公

そのまま追跡して彼女の屋敷に侵入して

屋敷内でいろいろ探索イベントがあるという話・・

うん、すさまじいストーカーだな、犯罪者だ

原画は、当時は大阪芸大の方（Ｍｉｎ－Ｎａｒａｋｅｎさんの先輩）にお願いしていました

上手な方ですよね、確かランスも一部描いてもらっている

その後、仕事をお願いする機会が無かったのが残念・・・

後、何故か覚えているの出来事が・・

シバーン「多田さん、ずるい」

ＴＡＤＡ「？？」

シバーン「Ｒａｎｃｅ－光を求めて－　なんて、サブタイトルがあってずるい」

シバーン「僕もつける！」

てな事があって　イントリューダー　－桜屋敷の探索－　というタイトルになった

クレセントムーンがぁる

主人公はオス猫、好きなメス猫をおっかけていたら

魔女に人間にされてしまい・・

そんなストーリーです

うん、猫ゲーなのか

この原画も外注さんです

あぶない天狗伝説

女の子主人公の修学旅行物だよ

レズ要素あり

これは、ランス、イントリューダーが出た後に開発がスタートしたかな

大阪芸大の方に新しい絵描きさん居ないとか聞いていたら、紹介してもらったのだ

むっちゃうまい、この人欲しい、うちに欲しい

この後、数年に渡ってＭｉｎ－Ｎａｒａｋｅｎをスカウトを続ける事になるのだ

　

とにかく、ぜひ描いて欲しい

外注という形で描いて貰い、作ったのが天狗伝説でした

やっぱ、Ｍｉｎ－Ｎａｒａｋｅｎさんは、この頃から凄いよね

ＤＰＳ

その後、作ったのがコレ　詳しくは、こっちのブログで・・

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時系列まとめ

１９８７年

　ＴＡＤＡ（私）、入社

　リトルプリンセス、エグゼクティブへの道を制作

１９８８年

　リトルバンパイア、学園戦記を制作

１９８９年

　２月

　チャンピオンソフトの経営危機、給与遅配

　大きな方向転換、アリスソフトブランドの誕生

　

　４月

　本格的な開発スタート、３本同時

　７月

　アリスソフト開始

　Ｒａｎｃｅ、イントリューダー　発売

　８月

　クレセントムーンがぁる　発売

　１０月

　あぶない天狗伝説　発売

　１２月

　ＤＰＳ、アリスの館　発売

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アリスソフトが始まった１年

エロゲーを作ったから、業績回復、もう安心

なんて事は無く・・

あいかわらず、給与は遅配

たぶん、社長はあっちこっちに金策で走り回っている

貧乏は続いていた

まだまだ知名度も低く、商品もそんなに売れて無かった

それでも、チャンピオンソフトの時より

ずっと売れるようになってきたのでうれしかったな

やっぱ、エロは強い

チャンピオンソフトの時は新作発売日にも

商品を平積みにされる事なんて無かったのだが

アリスソフトになってからは平積みを見るようになって

うれしかったよ、だって平積みだよ

複数本並べてくれているんだよ

そして、手に取って買ってくれる人も初めて見て、ああ・・泣きそうと